軽い操作性(Driving)…世界の車椅子を変えたパンテーラの魅力

第5章 キャンバ角について

車椅子を後(あるいは正面)から見たときに、ハの字型になっているのを、「キャンバ角が付いた車椅子」と呼ぶ。
通常の自動車のキャンバは下に狭く、車椅子の場合とは逆。

自動車工学のほうが先だったので、車椅子は逆キャンバ(ネガティブ・キャンバ)と呼ばれている。
「マイナス○○度のキャンバ」と表現する。
バスケットボールやテニスなどの競技のときに使う場合は、キャンバ角を大きくする。
パンテーラには18度までの大きなキャンバ角をつけることができるが、重量は増える。

パンテーラによる車椅子バスケット・シーン。右から二番目はヤッレ・ユングネル

パンテーラBT(特別仕様)
座面角、前後長が自在に調整できる。

※ キャンバ角の働きを理解してもらうために
まず駆動輪を外して床の上で転がします。車輪がまっすぐに立っているときは直進します。しかし車輪が傾くと、傾いたほうに曲がっていきます。これは10円玉を転がすとのと同じ原理です。 この物理の原理を応用したものがキャンバ角(正確に言うと逆キャンバ角))の付いた車椅子です。

左右の車輪は内側に切り込もうとする力が働くので、安定した直進性が得られます。

直進中の車椅子を急にターンさせると、ハの字型車椅子が圧倒的に優位です。キャンバ角の付かない車椅子は、基本的にまっすぐ進みたいという原理に支配されていますので、急に「曲がれ!」と言われても困るわけです。

ところがハの字型は、左右ともはじめから内側に、曲がりたくてたまらない状態です。ですから、片方にブレーキをかけてやれば、ブレーキがかからなかったほうは楽に、内側に切り込んで行きます。車椅子は、すぐにその場でターンします。これが、1976年にカナダのパラリンピックで初登場した秘密兵器の原理でした。

素早くターンできるという性能は、バスケットやテニスではたいへん重要な機能です。同じ体力や実力の選手が競い合うなら性能の良い車椅子が絶対に有利になります。

ところで、通常の折りたたみ式の車椅子(1945年型)には、キャンバ角を付けた駆動輪をフレームに取り付けることができません。製造はできてもシャーシの剛性が低く、それを実行した車椅子がどうだったかは、想像がつくと思います。

余談ですが、パンテーラ・ジャパンのカルムは折りたたみ式ですが、特別な仕掛けでシャーシ部に高い剛性を持たせて、キャンバ角を付けることができました。

ゼロ度、すなわち垂直に立った駆動輪は、旋回性能は著しく悪いのは事実です。ゼロ度から1度でも角度が付くと、旋回性能はアップします。キャンバ角が付くと旋回性能は良くなるのは確かです。

2度よりも3度がいいわけですが、旋回性能は正比例しません。2度を4度にしたからといって、倍の性能になるわけではなく、性能曲線はだんだん緩やかになっていきます。

キャンバ角をつけるとマイナス面も出てきます。それは車椅子の幅が増えることです。

24インチの駆動輪は、直径がほぼ60cmです。1度角度をつけると、およそ1cm、パンテーラは2.2度ですから4cmほど幅が広くなります。

パンテーラの場合、座幅36cmだったら全幅は56cmですが、例えばキャンバ角8度のものは、16cm広がるわけですから、68cmになり狭い扉だと通ることができなくなります。




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